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2019年2月21日木曜日、晴れ。
前回のインタビューから約1年。
前日にメールでインタビューの申し込みが入ったため、早速本日実施することになった。
まだ2月だというのに、なんだかもう春の気配。
例年、この時期は国立大学の試験が雪で混乱なんてニュースが新聞紙面を飾るくらいなのに…。
平年より寒い日や平年並みの寒さの日はあるが、季節外れの気温が増えてきて、結果平均気温が上がっていく。
トランプ大統領は地球の温暖化はでっち上げと言っていたが、アメリカファーストの発言で全く信用できない。
最近は宇宙軍の創設などと言っているし…。
地球上の争いを宇宙まで持ち込むなんて場外乱闘も甚だしい。
もっとも、エイリアンから地球を防衛する目的なら頼もしい限りだが、アメリカファーストなので、あてにはできない。
などと考えながら、銀座一丁目のカフェ・ベローチェに向かう。
当初待ち合わせ場所を東京駅に設定していたのだが、夜中に急遽銀座に変更を依頼。
しかし、うまく伝わっておらず、待ち合わせ時間の10分ぐらい前に「東京駅に到着しました。」というメールが!?急遽東京駅に移動!と思ったが、しばらく思いとどまっていると、タクシーで東京駅から銀座に移動中との連絡。
よかった、危うく無限ループのすれ違いとなるところだった…。
自動ドアを開けるとそこに、引き締まった体つきと、むっちりした胸元が目を引く女性が。
それが本日の依頼主元AV女優のトミー(仮称)、43歳である。
正確には元AV女優、現AV女優とのこと。
事前のメールのやりとりで、所属事務所を変えて「大変身」したということだったので、どんな派手な人が来るのかと思ったが、顔はすっぴんで、服装は至ってシンプル。どうやら、大変身というのは、外見的なことではないらしい。
現在は大手の熟女系メーカーに専属女優として所属、1本のギャラは60万円~と言う。
5万円で泣く泣く出演しているAV女優も多い中、1本60万円というのは、この年齢では異例の好待遇だ。
トミーも御多分にもれず、デビュー当初は不遇に悩む日々だったと言う。
「どうして、こんなにギャラがアップしたのか知りたくないですか!?」
店の奥の方の席に落ち着くと、トミーはまるでインタビューの筋書きをあらかじめ考えてきたという感じで、とうとうと語り始めた。
九州の福岡は博多の出身。
「アニソンが好きで、声優を志望していたのですが、第一新卒のときは、普通の会社にSEとして入りました。でも、やっぱり、声優の夢が捨てきれず、第二新卒で、地方のラジオ局に応募したんです。地方局ぐらいなら入れるかな?という気持ちで。採用されたのは、アナウンサーで、契約社員でした。」
しかし、理想と現実とのギャップに悩む日々。
しかも女性アナウンサーの場合は、営業などと異なり年齢が上がるにつれて給料は降下、待遇は悪くなるいっぽうだ。
何か面白いものがないかネットサーフィンしているときに見つけたのが、「好待遇」の字が躍るAVの求人だった。
当時は、恵比寿マスカッツがちょうどブレイクしはじめた時期で、握手会にファンが列を作るなど、AV女優がダークなイメージから華やかなイメージになりつつあった。
「当時アニメのパロディものとかも流行っていて、私自身、趣味で劇団員に所属していたので、是非私も作品に出てみたい!と思ったんです。でも、もう20代じゃないし、30代のおばさんだし…いろいろ悩む年ごろでした…」
色々悩みや不安はあったが、一念発起して上京。
「最初に面接に行ったプロダクションは社長が一人でやっているような会社でした。闇金系の小さな会社で。すごく面倒見のいい社長さんで、SODと溜池ゴローさんのところとかに連れて行ってくれました。」
だが、そこに所属することはなく、渋谷にある別のプロダクションに所属することにしたのだと言う。
「前のところは、営業をしないと仕事はないって言われたのですが、そこはすぐに仕事があるって言われましたし、10万円前貸しもありました。当時はお金がなくて、九州に帰るだけでもお金が必要で、10万円はすごく魅力的だった。断るわけにはいかず、所属を決めました。」
その決断はやがて「凶」と出る。
「メールのやりとりとかではすごくいいことを言っていたのに、実際には言っていることと全然違っていました。聞こえのいいことばかりを言っていただけだったのですね…。」
まず、最初に面接に行ったプロダクションの社長が言っていたように、仕事がすぐあるわけではなかった。
仕事があっても、素人もののAVで総ギャラ10万円のうち、女優の取り分が半分の5万円。
そこから九州と東京の往復の交通費をねん出しなくてはならない。
九州に帰ると手元にはいくらも残らず、何もせずに九州にいたほうがよっぽどましだったなんてことも。
「内容もひどくて、まだ結婚もしてないのに奥さんの役をやらされて。すごく素人扱いなんです。当時方言が流行っていて、博多弁をしゃべってって言われたけど、博多の人が全員博多弁しゃべれるわけじゃないんです。結局1作品に出ただけで辞めました。」
「プレイボーイ」や「フライデー」「フラッシュ」など出版社の仕事や着エロモデル、ライブチャットレディ―などもやったが、目指していたAVの仕事には恵まれなかった。
時は2010年から2011年、リーマンショックや東日本大震災などの人災・天災で人々の運命が激動の渦に飲まれていた時代、九州の実家では、父親の死後、父親の経営する建設会社の後継者の座を狙って、兄や父親の愛人らによる熾烈なバトルが展開していた。
トミーは、この機会に東京に出ようと、腹をくくる。
「リーマンショックで福岡はシャッター街になっていました。仕事をしても、手取りでせいぜい12万円ぐらい。ネットで地方にいながら、ゲームのシナリオライターや同人ゲームの声優とかもやって、こつこつ引っ越し費用を貯めました。」
そして、いざ、東京へ。ネットでの活動で、すでに東京でのコネはあった。
当時は、「CPE」などプロレス団体が主催する着衣エロ「キャットファイト」やGIGAの特撮ヒロインAVなどがブームになっていた。
「それに参加したくて、応募したら、プロダクションを介してくださいと言われました。実際に参加してみると、万年雑用ばっかりで、いじめもひどくて。素人なんだから練習は必要ないと言われたり。将来性がないと思ったので、辞めました。」
もんもんとした日々を過ごしていたときに、友達と当時まだ登場したばかりの「添い寝カフェ」のバイトの面接に行くと、こんなのもあるよ、と別の仕事を勧められた。AV女優の仕事だった。
「実は添い寝カフェの募集は隠れ蓑で、実際はAVの面接だったようです。友達は断っていましたが、私はやることにしました。」
そこで、2本AVに出たが、やはり、手取りは5万程度という低給にあえぐ日々。
ある日、某有名メーカーに面接に行くと言われ、再び転機を迎える。
「そのメーカーは面接で女の子の体にさわりまくって、女の子の反応を見て、採用かを決めるんです。担当の人はいい人だったんですけど、辞めることにしました。だって、それってセクハラでしょ!」
AVとは全く関係ないが、2016年頃から健康と美を決める大会に出場していた。
以前から筋トレ等で身体づくりをしていたので、スタイルや筋肉美には自信があったと言う。
当初は全くの趣味だったが、2017年・2018年と立て続けに入賞を果たす。
それを機に、その業界では一躍有名人となった。
「すると、AVの面接に行くと、あなたのツイッターいつも読んでいるよと言われるんです。本人なら、あとで連絡してくださいって言われました。よく有名人を名乗る偽物がいるんですね。あなたを撮りたい人がいると言われたこともあります。逆にお金いくら必要?て言われたり。」
そして、某有名熟女メーカーと専属契約を結び、今は、アスリートや筋肉もののAV出演1本60万円、2本目40万円、3本目40万円と言う。もちろん、大会入賞の実績は隠して出演するが、メーカーにしてみれば、大会の入賞者がAV出演することで、プレミアムがつくというわけだ。
しかし、大会は国際機関が開催する由緒正しいもの。AVに出演しているなんてことがばれたら、賞のはく奪は間違いないだろう。
実際、ツイッターでは入賞者によく似ているとして炎上中だと言う。
「共演したことのあるしみけんさんが、『そんなの気にする必要ない。どんな仕事しようが勝手。そういうのを相手にするとかえって炎上する』とアドバイスしてくれました。」
そう言いながら、彼女自身炎上に全く動じる気配がない。
出演するAVのテーマはもちろん「アスリート」で、内容もベンチプレスでトレーニングをしながらの壮絶かつマニアックなものらしい。アスリートの妄想がかたちになった珠玉の作品に違いない。
インタビュー後、これからジムで専属トレーナーによるレッスンがあるのと言って、ギャリーカートを引いて地下鉄のホームに消えて行った。
熟女になると、底辺であえぐAVの世界で、自分に常に磨きをかけて、価値を高めていく。
それはAVに関わらず、すべての職業に必要なことだ。
今度彼女を見るのは新作のAVのパッケージだろうか?それとも大会の入賞者がAV出演という、マスコミの記事だろうか?
話題になればなるほど、皮肉なことにDVDもどんどん売れる。
ただ今ツイッターが絶賛炎上中と事も無げに語るトミーのことだ、バレたらバレたでまた「大変身」を遂げるに違いない。
10年後彼女がどうなっているのか、想像が尽きない。
2018.03.03
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